図面を作成する前に考えること
4dBarn は、創設以来100 件以上の酪農家の牛舎図面作成と農場の将来計画設計に関わってきましたが、図面を作成する前の将来計画を練る段階がいかに重要であるかを目の当たりにしてきました。
私達は2021年、『デイリージャパン』誌に全8回の連載記事を寄稿しました。連載では、農場の将来計画と拡張の選択肢、建築コストの削減と動物福祉を向上するためのロボット牛舎への改築、ロボット牛舎の”管理者”に必要な新しい作業習慣や牛舎マネジメントの実践的なヒントを紹介しています。本稿はその第1回目の改稿です。
一緒に考えてくれるパートナーを早期に見つける
ロボット搾乳牛舎の建築開始を基準にして、少なくとも1・2年前から計画を立て始めてください。早くから経営方針を決めることで、自分の考えを整理する時間を十分に取ることができます。
良い成績を得るためには牛舎の図面を手に入れるだけでは足りません。牛舎を変えることに合わせて、仕事のやり方も変える必要があるためです。
また、補助金の申請、設備の見積もりと検討、施工業者や各ディーラーとのやりとりなどは、意外と時間がかかることがあるということも覚えておいてください。各工程において頼れる協力者を見つけられるかどうかは、成功の可否を大きく左右します。ロボット搾乳牛舎に関する知識や実績があり、他の酪農家からも推薦されているパートナーを選びましょう。
まずは経営方針の決定を
4dBarnはこれまでに多くの酪農家の「理想の牛舎」の具体化を支援してきました。その際、初めから図面の作成には手をつけません。まず農場の経営方針や運用体制をどうするかに集中します。ここでの判断が最終的に新しい牛舎で成功できるかどうかに直結すると考えています。
具体的には、新しい牛舎でどのように牛を管理するか、どうのような作業をどういう方法で行うか、を決めます。他の酪農家や一緒に働くスタッフ、信頼できるアドバイザーにも相談して、様々な視点や新しい考えを取り入れることが大切です。経営方針が固まった後で、はじめて牛舎図面に取りかかりましょう。
経験者から話を聞く
他の農場を訪問して話を聞くのも有効な方法です。建物の構造やロボットのブランドだけではなく、その農場が採用している管理方法や作業手順に注目してみてください。ストールの敷料の交換・補充頻度や使用している機械、乳房炎の頭数と搾乳方法、牛舎での平均的な作業時間、などが例です。さらに、ロボットへの訪問回数やフェッチカウ※の頭数などは、牛の動線がうまくいっているかどうかの判断材料にもなります。また、初乳の管理、乾乳手順、搾乳ロボットの洗浄に関する農場独自のコツを聞けるかもしれません。
※ 【フェッチカウ】搾乳ロボットへ自発的に行かないため、人が搾乳ロボットへ追う必要のある牛のこと。
牛舎が変わるのなら働き方も変えること
従来の搾乳方式からロボット搾乳のフリーストール牛舎へ移行することは、非常に大きな変化です。労働生産性における投資効果を最大限引き出すためには、従来と異なるやり方が求められます。実際に成功しているロボット牛舎での作業を覗いてみてください。効率的に作業するために、どのような選択肢をとればよいのか、明確にイメージできるようになるはずです。
新しい牛舎での効率を考えるにあたっては、搾乳頭数や換気システムなどの大きなものから、授精場所や初乳の給与方法などの細かい点まで、考えるべきことが数多くあります。あらかじめしっかりと決めておくことで、図面を描くときにとるべき選択肢が全体目標に合わせて明確になり、理想の牛舎の実現へ大きく近づきます。
4dBarnでは、最適な選択肢をロボット牛舎の図面に落とし込んでいく一連の過程をサポートしています(4dBarnのデザインサービス)。
関連動画(4dBarn eアカデミー・無料):労働効率の高いロボット牛舎の働き方